187 東へ

朝のバス待ち、iPhoneの画面を眺めていると、鼻から抜け出た空気がふぅと白む。子どものように、はぁ、と一つ息を吐き出してみると、張りつめた冷気の中に、白い呼気が広がった。

秋からの時間の流れは速く、日々に振り落とされないようになんとか、だったけれども、、ようやく今日で御用納め。明日からしばらく、東へ向かうことにした。

今年は、夏に祖父が亡くなり、秋に父が亡くなった。未だに、実感がないのだけれど、ただ、父が亡くなる10日ほど前から、彼の人生にとって大切なピースが次々と姿を現し、彼の人生そのものを象って埋めていく様子を、身近なものの一人として見守ることはできた。なかなか難しい生い立ちをした父。これまであまり幸せを感じることはなかったんじゃないか。そんな思いを打ち消すように、現れたピースの一つ一つが輝きを放ち、決して多くも大きくもないけれど、幸せは確かにあったはずだ、とそんな風に感じられた。

冬。仕事を終えた帰り道、久々に歩く夕暮れどき。空気は澄みわたり、空は群青に染まる。その美しさと言ったら。

仕事の忙しさにかまけて、何かをじんわりと感じたり、じっくり考えたりすることのないままに今日まで日々をすごしてきたので、年末年始は、少しのんびりとすごす予定。

言葉足らずの挨拶ですが、、今年も、ありがとう、です。ありがとう。

186 桜の匂い、立ち上る



残暑厳しく、雨降れば不快指数ばかりが上がっていく。
全く、、と全身から汗を噴き出しつつ、傘を広げて歩き出す。瞬間、ん?と、頭が戸惑った。しかし、どうにも季節が違うようだ、と、再び頭が言う。あたりに広がる、サクラの匂い。元をたどり、道沿いのコンクリート壁を眺めると、風に飛ばされ、落葉したサクラが吹き溜まっていた。

季節は巡り、秋を迎える。いくつかの思いで始めたこの場も、5年を迎えようとしている。

185 迷彩


歩道をそれて木に近寄り、ひたひたと手のひらを幹に当てる。幹づたいに、木漏れ日に向かって、頭上を仰ぐ。

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184 生姜、環状、猫のぬくもり


”ここでしか食べられない味なので、来るたび買いに来るんです。”と言うと、「見た目が地味だから、知っている人は買ってくれるんですけどね」と店の人。いつもは白ご飯の弁当を買うのだけれど、、今回の季節のご飯は生姜ご飯。これ、試さずにはいられまい。

夏の夕暮れ時、少し涼んだベランダで、友人と並んで食べる弁当。環状線を下ってくるトラックの群れ。辺りに響く蝉の声。洗濯機の置いてある自分の家のベランダで晩御飯を食べるという戯れに付き合わされた友人は、大きな体をベランダに閉じ込められてしまっているにもかかわらず、、「おいしいね〜」と微笑んでくれた。

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